顎関節症治療(歯ぎしり・食いしばり・ボツリヌス療法)
顎関節症治療(歯ぎしり・食いしばり・ボツリヌス療法)

顎関節症(がくかんせつしょう)とは、顎の関節やその周囲の筋肉(咀嚼筋)に何らかの異常が生じ、口を開け閉めするときの痛みや雑音、口が開きにくいといった症状をきたす疾患の総称です。「顎がカクカク鳴る」「口を大きく開けると痛い」「朝起きると顎がだるい」といった症状に悩む方は少なくなく、幅広い年代にみられます。
顎関節は左右に一つずつあり、頭蓋骨のくぼみ(下顎窩)と下顎骨の突起(下顎頭)の間にある関節円板(かんせつえんばん、クッションの役割を果たす組織)によって、スムーズな開閉口が可能になっています。この関節円板の位置のずれや、周囲の筋肉の過緊張によって、さまざまな症状が現れます。こうした顎関節症の背景には、歯ぎしり(ブラキシズム)や食いしばりが関与しているケースが多いと考えられています。
歯ぎしり(ブラキシズム)や食いしばりは、上下の歯を無意識に強くこすり合わせたり、噛みしめたりする癖のことです。就寝中に起こるタイプと、日中の緊張時に無意識に歯を接触させてしまうタイプがあり、どちらも顎の筋肉(咀嚼筋)や顎関節、歯そのものに大きな負担をかけます。
軽度であれば日常生活への影響は少ないこともありますが、力の強い歯ぎしりや食いしばりが長く続くと、歯がすり減る、詰め物やかぶせ物が欠ける、顎の関節に痛みが出るなど、さまざまなトラブルにつながることがあります。ご自身では気づいていないケースも多く、ご家族から指摘されて初めて気づいたという方も少なくありません。
当院では、歯ぎしりや食いしばりでお悩みの方に対して、マウスピースによる保存的な治療に加え、症状に応じてボツリヌス療法(咬筋にボツリヌストキシンを注射し、筋肉の過剰な緊張を和らげる治療)もご提案しています。
これらの症状に心当たりがある場合は、歯ぎしりや食いしばりが関与している可能性があります。気になる症状がある方は、お早めに歯科・口腔外科を受診してください。
歯ぎしりや食いしばりの原因は一つに特定できるものではなく、複数の要因が重なって生じると考えられています。
精神的なストレスや緊張状態が続くと、無意識のうちに歯を食いしばったり、就寝中の歯ぎしりが強くなったりすることがあるとされています。現代社会では、仕事や生活上のストレスが誘因となっているケースも多いと言われています。
上下の歯の噛み合わせのバランスが乱れていると、特定の歯や顎の一部分に負担が集中し、歯ぎしりや食いしばりを助長する場合があります。
長時間のデスクワークやスマートフォンの使用による前傾姿勢、頬杖をつく習慣、うつぶせ寝などは、顎や首まわりの筋肉に偏った負担をかけ、食いしばりの一因になることがあります。
浅い睡眠や睡眠中の覚醒反応が、歯ぎしりの発生と関連していると言われています。睡眠環境やカフェイン・アルコールの摂取なども影響する可能性があります。
歯ぎしりや食いしばりを放置すると、歯や顎にさまざまな影響が及ぶことがあります。歯がすり減ることによる知覚過敏、詰め物やかぶせ物、インプラントの破損や脱離、歯根が割れてしまう歯根破折、歯周組織への負担による歯周病の悪化などが挙げられます。また、咀嚼筋の過緊張が続くことで顎関節症を引き起こしたり、頭痛や肩こりといった全身症状につながったりすることもあると言われています。咬筋が発達することで、いわゆるエラの張りが目立つようになる場合もあります。
歯ぎしりや食いしばりに対する治療は、症状の程度や原因に応じて組み合わせて行います。
就寝時にマウスピース(スプリント)を装着し、歯や顎関節への直接的な負担を軽減する方法です。歯科治療における基本的な対応として広く行われており、歯のすり減りや破損の予防に役立てることができます。ただし、筋肉の過剰な緊張そのものを抑える効果は限定的とされています。
マウスピースを使用してもなかなか改善が見られない場合や、咬筋の過緊張が強い場合には、ボツリヌス療法をご提案することがあります。ボツリヌス療法とは、ボツリヌス菌が産生するたんぱく質であるボツリヌストキシンを、咀嚼筋の一つである咬筋に注射する治療法です。神経から筋肉への伝達をゆるやかに抑えることで、筋肉の過剰な収縮を和らげ、歯ぎしりや食いしばりによる負担の軽減が期待されます。
注射後、数日から一週間程度で筋肉の緊張がやわらぎ始め、効果を実感しやすくなるとされています。効果は一定期間で徐々に薄れていくため、症状の経過を見ながら継続的な通院が必要になる場合があります。咬筋の過緊張がやわらぐことで、結果として咬筋の輪郭が落ち着き、エラの張りが目立ちにくくなることも報告されていますが、効果の現れ方には個人差があります。
なお、ボツリヌス療法は歯ぎしり・食いしばりへの適応外使用にあたるため、治療にあたっては十分なカウンセリングを行い、期待できる効果とあわせてリスクについても丁寧にご説明したうえで進めてまいります。
頬杖やうつぶせ寝、日中の食いしばりといった癖を見直していただくためのアドバイスや、顎まわりの筋肉をほぐすセルフケアの方法についてもご説明します。
ボツリヌス療法は保険診療の対象外となる自由診療です。治療をご検討の際は、事前に料金や効果の持続期間、副作用について担当医より詳しくご説明いたします。注射部位の内出血や腫れ、一時的な違和感が生じることがあります。まれに薬剤が周囲に広がることで、笑ったときの表情がつくりにくくなる、咀嚼力が一時的に低下するなどの症状が出ることが報告されています。これらの症状は時間の経過とともに回復していくとされていますが、体質や体調によって感じ方は異なります。
妊娠中・授乳中の方や特定の疾患をお持ちの方は治療を受けられない場合がありますので、事前の問診で必ずお申し出ください。料金の目安についてはカウンセリング時にご案内しております。詳しくは料金表ページをご確認いただくか、直接お問い合わせください。
ボツリヌス療法は、咬筋の過剰な緊張をやわらげることで歯ぎしりや食いしばりによる負担の軽減を目指す治療であり、癖そのものを完全になくすものではありません。マウスピースなど他の治療と組み合わせながら、症状の経過を見て対応していきます。
細い注射針を使用するため、痛みは比較的少ないとされていますが、感じ方には個人差があります。施術前に詳しくご説明いたします。
効果の持続期間には個人差があり、時間の経過とともに徐々に薄れていくとされています。症状の状態に応じて、継続的な通院をご案内する場合があります。
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